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zoom RSS 境界性人格障害闘病記【She Is】 No.002

<<   作成日時 : 2014/10/09 00:36   >>

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ある女性の闘病記。

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境界性人格障害(境界性パーソナリティ障害)については
下記文献(サイト)を参考にして下さい。
【境界性パーソナリティ障害 - Wikipedia】
【境界性人格障害ガイド】


【前話No.001はこちら】

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境界性人格障害闘病記【She Is】 No.002


彼女の病気は快方に向かいつつある、ように見えた。


「境界性パーソナリティー障害」という病名を付けられてからの彼女は、その救いようのない診断とは裏腹に、随分と表情がすっきりしている様に見えた。

「自分が抱えているものが、今まで『やんちゃで扱いにくい黒猫』程度だと思っていたのに、それをいきなり『それは真っ黒な雷雲です』って言われた様な衝撃よ。ああ、どうする事もできないのね、なら無理に抗ったり宥めすかしたりしようとするのは辞めたわ、って感じ」

病気のことを数名の友人にも打ち明けたが、その友人たちの心配をよそに、彼女はめきめきと強くなっているようだった。

ただ、それはやはり外へ見せているだけの顔で、やはり時々独りになると大泣きしたり叫んだりしていたそうだ。
医師が言っていた「不安の種の芽が伸びた」状態だろう。
「誰が」「何が」という理由はない。時間も関係ない。突然、不安の種が芽吹き、彼女を訳もなくどん底に突き落とすのだった。


しかし以前と違うのは、その状態に陥った時の対処法を彼女自身が幾つか編み出したことだった。


医師に言われた「嵐がやって来るイメージ」を思い浮かべ、「この嵐は黙って耐えていれば去る、大丈夫、大丈夫だ」と自分に言い聞かせ、布団にくるまってひたすらじっとする。
眠れる時はそのまま眠る。
クッションを鳩尾のあたりに押し付けると安心すると言う文献を読んだので、それも時々やってみるようになった。

そう、彼女は「文献」に頼り始めた。
パニックになった時は、ひとしきり大泣きした後、インターネットを開き、境界性パーソナリティー障害を診た医師、患者本人、関わった第三者などの文献をひたすら読み漁るようになった。
「自分の状態」が理解できると落ち着くのだそうだ。


そしてある日その文献の中に、彼女を診た医師とは違うことを言っている文章を見つけた。


「35歳くらいを境に落ち着いてゆく」

「必ず治る病気」

「境界性パーソナリティー障害を乗り越えた人は、本来持っている素晴らしい性格を更に成長させ、より良い人間となって戻ってくる」


彼女はもうインターネットとの付き合いはかなり長い。だから、書いてあることを全て鵜呑みにするのは危険なこと、自分にとって都合の良い文章ばかりを信じないこと、は常に気をつけてきていた。

ただしその文章を見つけた時、彼女はこう思ったという。
「本当か嘘か判らないけど、この言葉をお守りにして、自分の病気と戦っていこう」と。


そして彼女は、新しい仕事も始めるようになった。
今まで室内に篭って作業机に向かい黙々と制作するような仕事ばかりしてきていたが、突然、「体を動かす仕事がしたい」と思ったのだ。

自営業が上手くいってないから資金調達のため、という目的もあったが、そんな事より、ただただ体が動かしてみたかった。

当然、彼女を知る家族や親戚は反対した。彼女の体力がないこと、運動神経がないことを知っていたからだ。
特に母親に反対されると大体そのまま言われたとおり辞めてしまう彼女であったが、その時ばかりは、母の反対を振り切って新しい仕事に就いた。

「若い頃、新聞配達とかやった事があったの。だから、多少の体力仕事も何だって出来ると思ってたわ。というより、『自分の人生はやろうと思えば何でも出来る』と証明したかったの」

そしてその仕事の一日目、彼女は自分が人生を甘くみていた、と痛感したという。

「とにかくハードだった。息ができない、汗が止まらない、ご飯が喉を通らない。それなのに周りの人たち、それも私よりずっと年上の女性たちが、その仕事を平然とやってのけるの」

初仕事の午前の部が終わった時、彼女は休憩時間に泣いていたそうだ。

「あなたには才能があるとか言われてちやほやされて、えらそうにデザインの仕事なんてやってたけど、本当にちっぽけだと思った。ここにいる人たちの方が、何十倍もえらいし凄いと思ったわ。私は何なんだろうって思った。悔しくて、悲しくて、みじめだった」
それと同時に彼女は、この仕事を続ける事ができたら、自分はきっと変われるに違いないと確信したそうだ。

「この時ちょうど、好きだった男の人に捨てられた後だったの。それも悔しくて悲しかったけど、この仕事を続ければきっとそれも乗り越えられると思った。捨てられた、とか言うと恨みがましい感じがするけど、悪いのは私よ。彼に病気のことを打ち明けて、彼はちゃんと聞いてくれたのに、私は『症状が落ち着いて、良くなるまで待ってて。良くなったら結婚しましょう』ってどうしても言えなかった」

彼女は少し自嘲めいた微笑みを浮かべて、続けた。

「だってそんなの、何年かかるか分からないもの。彼の人生を縛る資格は自分に無いし、そこまで自分が愛されてる自信もなかったわ。だから、『彼がもっと普通の、何の問題もない女の子と結ばれてくれればいい』と願った。そしてその通りになった。人生は思い通り、って好きな作家が言ってたけど、本当ね。」

肩を竦めてにっこりと笑うその瞳は、少し寂しさを宿していたが、同時に「強さ」も感じることができた。
今でこそ強い瞳となった彼女だが、その当時はありとあらゆる切欠でその「彼」のことを思い出しては、涙を浮かべていたという。

「とても辛かった。だけど、友達が沢山助けてくれたの。その事を切欠に、前よりずっと仲良くなれた友達も居るわ。彼が離れていってしまったのは本当にとても悲しかったけど、その代わり、私にはこんなに素晴らしい友達が沢山いたんだって気づく事もできた。だから、彼が離れてくれて良かったのよ。強がりに聞こえるかも知れないけど、本当に感謝してる。どうか幸せになって欲しいと願うわ」


彼女の病気は、快方に向かいつつある、ように見えた。

ひとしきり話し終わった彼女にその事を告げると、口の端をニッと吊り上げ
「まだまだ。まだまだこれからよ」
そう言って、彼女は笑った。


その心が既に以前より強くなっている事に、きっと彼女はまだ、気づいていない。
 

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