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zoom RSS 短編小説【世界】

<<   作成日時 : 2007/04/17 23:45   >>

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ある少女と“彼”の、小話。

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【世界】




「世界は何で出来ていると思う?」

 わたしの隣に座った彼は、言った。
 その眼は、とても澄んでいた。


「何それ、なぞなぞ?」
「なぞなぞじゃないよ」
「じゃあ、心理テスト?」
「心理テストでもない。リコは、どう思う?」
「う〜ん……」
 わたしは考えた。
 わたしの世界。何で出来てる?
 お父さんと、お母さんと、あの人と……それから、隣に座っている、彼と。
 空気があって、木があって……
 色々なものが合わさって、造られている『世界』。
 それを、ただひとつで表すことなど出来るのだろうか?

「わかんない。」
 わたしはあっけなく、白旗をあげた。

「そうか。僕はね、世界は“水”で出来ていると思うんだ。」
「みず?」
 確かに世界には、水がたくさんある。
 でも、それだけで世界が造られていると言えるのだろうか。

「そうだよ。たくさんたくさん熱を加えると、全部あっけなく蒸発してしまう。だから大人になると、みんな恋しなくなるのさ」
「恋?」
 話が突拍子もなさ過ぎて、ついて行けない。
「恋をするとみんな、ものすごく熱を出すだろう? そうやって世界中の人間が全力で恋しまくってたら、世界は蒸発してしまうじゃないか。だから大人は、恋をしないのさ」
「わかるような、わからないような……。じゃあ、子供はどうして恋をしてもいいの?」
「子供ひとりが、たとえ世界中の子供が全員恋したところで、たいした熱量にはならないからさ」
「ふぅん。」
 わたしは気のない返事をした。

 わたしには今、好きな人がいる。
 隣に座っている彼、ではない。
 今、こんなにあの人を好きで好きで、泣いたり笑ったり忙しいのに、これがいつか全く無くなるなんてことが、あるのだろうか?
 全く、ではないか。
 熱量が、抑えられるだけかも知れない。
 世界を蒸発させないために。

 隣に座っている彼の、その眼はとても澄んでいた。
 彼はきっと、大人になっても恋し続けている気がした。
 全力で。

 そのことを、彼に言ってみた。

「そうしたら僕は、自分が蒸発しちゃうかも知れないね。その熱量に耐えきれなくてさ」

 彼は笑って、言った。


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